秋祭り



福山市鞆の浦歴史民俗資料館発行《鞆の浦の自然と歴史》より引用


鞆の浦の渡守(わたす)神社の例祭は、旧暦8月11日から3日間行われます。渡守神社は、渡守大明神とも言い、祭神は大綿津見命です。綿津見は、万葉集によると、海や海神を意味する枕詞で、「海路平安」を祈願する海神として、船人の信仰を集めました。
例祭の時、引き廻される山車をチョウサイと言います。装飾布団を3枚重ねて台上に太鼓を置くので、布団太鼓とも言われます。姿は神輿に似ていて、神輿太鼓とも呼ばれます。瀬戸内海沿岸では、チョウサイとか太鼓台と言われ、北九州一帯にも分布しています。
例祭の1日目は、渡守神社から当番町への神輿渡御です。2日目は、当番町での御旅所祭があり、3日目は、当番町からじんじゃへの還御祭です。
旧鞆町7町が輪番で当番を務めます。当番町の各家では、提灯ぐいを立てて、提灯に番傘を付けます。そして、幔幕を張り、軒先に松飾りを施し、絵行灯(あんどん)で飾り付けをして祭りを迎えます。
1日目の夜、“明かし物”といって、大書した行灯や絵を描いた大行灯を“馬の台”(台車)に乗せ、太鼓と鉦のリズムで神輿渡御を先導します。2日目は、各家で屏風などを飾り、趣味の会では生花や工芸品を展示します。また、“造り物”といって、明かし物の大行灯に描いた人物や動物の実物大の人形を作って飾ります。御旅所祭は夜更けまで賑わいます。
3日目の還御祭では“造り物”を馬の台に乗せて曳き、還御を見送ります。還御祭が終ると、チョウサイが出て、祭は最高潮に達します。太鼓をたたく子どもは、錦紗の着物に烏帽子をかぶり、縮緬の赤・青・黄の3色のたすきを背に化粧したものでした。
この3日間、尾道屋ばやしやアイヤ節や俄踊りも出て、賑わう祭です。